大学教員インタビュー

大石 和男教授

大石 和男教授
感覚処理感受性、首尾一貫感覚、ストレス対処

研究内容

現在、私の研究室で取り組んでいるテーマは多岐にわたります。その中でも最近よく使用する言葉は、「困難の克服」、「感覚の敏感さ」、「心理的緊張(あがり)」、それに「食習慣」などです。そして、これらのすべてのテーマの底辺に共通して流れているキーワードは「人生と自己の肯定」や「個人差の受容」であると考えています。
ここでは、「感覚の敏感さ」に限って少し詳しく言及してみましょう。私は昔から他人の言動に反応しやすく、すぐに落ち込んでしまうようなストレスに弱いタイプでした。そんな嫌な自分を変えようといろいろと試みましたが、あまり効果はありませんでした。その後、人の心を知るために心理学の研究を始め、同時に学生の悩み相談の仕事にも関わるようになりました。そんな折、ある大学院生が米国で注目され始めた敏感な人(HSP)という概念を教えてくれました。敏感さはある程度生まれつきのもので、うつ病などの心の病にかかりやすく、病がひどくなると自分の命まで捨ててしまうことも少なくないといいます。反面、人の心の痛みに共感しやすく、また芸術の分野で活躍するなどの素晴らしい資質も沢山ある(個人差の受容)ともいいます。
私はその時、困難に直面する敏感な人を何としてでも救いたいという気持ちが湧いてきました。そして、そのためには客観的な研究を通した冷静な分析が必要だと直感したのです。現時点では、敏感さの程度を正しく評価する日本人向けの調査方法がないので、学生と一緒にそれを作ることから始めています。次に、敏感な人にはどのような考え方の癖があり、どのようにして気分が落ち込んでいくのか、親和性の高い他の特性などの調査をしています。気分が落ち込むプロセスや他の特性への介入が出来れば、最悪の状態にまでいくのを止めることが出来るからです。私は、敏感な人たちの素晴らしい資質をご本人に自覚していただき、自分を追い詰めるような生き方に終止符を打っていただきたい(人生と自己の肯定)と願い、研究を続けています。

研究指導

研究した内容は、正しく公開されなければなりません。さらに、できるだけたくさんの人に知っていただくことも必要です。そのため、私の研究室では出来る限り国際学会の場で研究発表を行ってもらいます。したがって、ほとんどの大学院生は年に一度以上、国際学会の場で研究発表を行っています。研究論文の公開についても同様です。論文にはその権威付け(どれ程たくさんの研究者が引用してくれるかの指標)がなされていますので、出来るだけ高いランクの国際誌への掲載を目指しています。
研究のテーマは様々ですが、最近の研究テーマは、「演奏家のあがりと実力発揮度」、「共食と心理的健康」、「敏感な人(HSP)の総合的研究」、「女性競技者の食行動」、「ライフスキルと心理的健康」、「運動習慣が自己効力感と気分の改善を招く機序」などです。

受験生へのメッセージ

私の研究室の修了生は、多くの方が大学や研究機関で活躍されています。大学院へ進学してまもない頃は、自分が国際学会での発表や国際誌への論文の投稿が出来ると考えていた方はほとんどいないと思います。しかし、意識を高めて研究を行うことで誰もが出来るようになりますので心配はいりません。これからは、より多様な職種につかれる方も増えると思いますが、研究活動を通して思考の論理性や客観性をトレーニングすれば、どのような職においても役に立つと思います。
また、すでにお話をさせていただいたように、私の研究室に共通する研究テーマのキーワードの一つは「個人差の受容」ですが、これは私の人生でも大切にしています。人種、言葉、文化、生活習慣など人は様々であるのが自然な姿です。想像してみてください。人がみんな同じ言葉を話し、同じ生活をし、同じような性格をしていたらどうでしょう。私は個人差が世界や個々の人生を豊かにしていると確信しています。