大学教員インタビュー

佐野 信子教授

佐野 信子教授
体育・スポーツとジェンダーウエルネス

研究内容

私は体育・スポーツをジェンダーの視点から研究しています。
卒業論文として、運動・スポーツ実施の男女別について取組みましたが、統計処理をした結果を述べるだけで提出してしまい、何かが足りないように感じたまま、大学院に進みました。そこで「ジェンダー・スタディーズ」に出会いました。私の研究の視座に欠けているものを、まさに「発見」し、それと同時に、体育・スポーツ分野では、ジェンダーの視点に立った研究が他の領域よりも少ないことを知りました。「スポーツはジェンダー最後の砦」とも言われます。その「砦」に取組んで行こうと決心し、特に「学校体育にみられるジェンダー・バイアス」についての研究から始め、現在では、もう少し幅を広げて「スポーツにみられるジェンダー・バイアス」にも向き合っています。
「学校体育とジェンダー」では、ある中学校の先生と共同で研究を進めており、その一部につきましては、NHKのニュース番組でも取り上げていただきました。ジェンダーの視点からみた場合、学校体育にはまだまだ課題が山積しています。「スポーツとジェンダー」につきましては、特に「運動遊び」にみられるジェンダー・バイアスについて論考を報告しております。「運動遊び」には、「生物学的な男女差」を超えた「性差」が認められ、それらに大きな影響を与えているものが「ジェンダー」であることを指摘しております。
今から約30年前、ある大学の助手をしていた頃、ある著名な先生から「ジェンダー研究はすぐに廃れるよ」とのお言葉を頂戴しました。私は、日本におけるジェンダー研究の必要性を強く感じていたので、このお言葉から逆に、「まだまだジェンダー研究は根付いていないのだな」という気持ちを強くし、(若かったこともあり、)体育・スポーツ領域で「ジェンダー」に関する研究を蓄積することの必要性をさらに強く抱きました。
30年経過した今、広く社会でもジェンダーについての理解は広がりがみられ、体育・スポーツ分野でも研究の蓄積がみられています。30年前に予言のようにいただいたお言葉が間違いであったことが実証され、安堵している気持ちでもあります。しかし、他の研究分野に比べれば、体育・スポーツ分野でのジェンダー研究の蓄積はまだまだ浅く、課題は山積しています。
「学校体育とスポーツ」を研究している私としましては、身体が前面に出てくる「体育」という教科で不要なジェンダー・バイアスのない授業が実践できるのであれば、それは他の教科の不要なジェンダー・バイアスを取り除くことに繋がる、と考えています。つまり、学校体育は、学校から不要なジェンダー・バイアスを取り除く牽引役になると考えております。

主な研究業績は以下の通りです。
佐野信子、2018、「男女共修」、「子どもの遊びとジェンダー」、『よくわかるスポーツとジェンダー』、飯田貴子他編著、ミネルヴァ書房、38-39、54-55。
佐野信子、2020、「チアリーディングとジェンダー―応援する「主体」としてのチアリーダー―」、『体育の科学』、第70巻第6号、404-409.

研究指導

大学院生をゼミ生として迎えたことは未だありませんが、大学院で展開している授業の中で、他の先生のゼミ生さんに授業をさせていただいております。ほとんどの方が、「ジェンダー」についての基本的・現代的な知識をお持ちでないので、授業はそこからがスタートです。体育・スポ―ツの領域で、「ジェンダー」の視座を持つことの重要性を認識していただけるように、授業では心がけております。
担当しているスポーツウエルネス研究では、本年度からテキストを用いて、「体育・スポーツとジェンダー」研究の最前線について議論していくことを考えております。

受験生へのメッセージ

どのような研究領域にいらっしゃるにせよ、「ジェンダー」に関する正しい知識を持たれて研究科を修了いただきたいと願います。修了後の進路は多様ですが、どの分野で活躍するにせよ、「ジェンダー」の正しい知識は重要である、と考えるからです。
受験を希望する学生の方々には、ご自分のこれまでの人生を、ジェンダーの視点から振り返っていただきたいです。そこに不要なジェンダー・バイアスは認められるのか、かつてみられた「男子は格技(武道)、女子はダンス」といった明示的な男女別だけではなく、身体測定の際、常に「男子が先で女子が後」といった「隠れたカリキュラム」(参考:東京女性財団、1996、『「隠れたカリキュラム」を考える』(VHS))などへも目配りしていただき、誰にとってもジェンダーは身の回りの問題であることを自覚していただきたいと考えます。