大学教員インタビュー

芝田 英昭教授

芝田 英昭教授
社会保障、医療保険、介護保険、格差

研究内容

今は社会保障政策の研究をしています
大学卒業後、地元の県庁に就職しましました。私が生まれた福井県は、日本列島がその中央部分で日本海側で「く」の字に折れ曲がる辺りです。県の南半分はリアス式海岸で風光明媚ですが、長らく陸の孤島と言われていました。その辺鄙な福井県に日本で初めて商業用原子炉が稼働し、その後、原発銀座と言われるほど原発が密集し、自治体財政は原発の固定資産税、原発関連事業者による法人地方税、更に電源立地交付金により膨張しました。この間、地域が変容する様を、中学生の頃から現在までつぶさに見てきました。特に公務員になったことで、福井県や原発が立地する県南地域において、生きる上で最も大事な「職」が、原発企業とその関連企業に独占されてしまったことを思い知らされました。公務員在職の折、原発によるいびつな財政、地域住民の社会関係資本の脆弱化等に関してもう少し専門的に調べてみたいとの思いに駆られ、家族の反対を押し切って、公務員を退職し大学院に進学しました。
当初は、「原発立地自治体財政と地域住民の生活変容」というテーマで研究を進め、修士論文は、『経済』(月刊誌:新日本出版社)に全文が掲載されました。とても権威のある雑誌だったので、その後も当初の研究を継続する予定でした。
しかし、私が博士後期課程に進学した年、長女が「悪性脳腫瘍に罹患」しました。主治医は、「腫瘍の切除手術、放射線療法、そして抗がん剤投与とあらゆる治療法を試していくが、お子さんの隋芽細胞腫は治療後5年生存率が0.5%ですから、覚悟しておいてください」と告げられました。当時の生活は、講義のない日は、昼間は遺跡発掘作業員、夕方から娘の入院する病院に行き、病室に簡易ベッドを持ち込み朝まで過ごしました。また、講義のある日は、片道2時間ほど車を走らせ大学まで行き、また夜には病院に帰着し朝まで過ごすというような生活でした。娘が悪性脳腫瘍に罹患したことで、私たち家族の生活は一変しました。また、私の研究も原発問題から「社会保障、特に医療保険」に変えることにしました。既に一定の業績もあげていた研究者の卵にとっては、大きな冒険であり、変更したテーマで本当に研究が進められるのかも心配でしたが、ベッドに伏せる娘を見ると研究テーマ変更は必然だと思いました。

現在は、論文を年間5~10本執筆していますし、著書も1年に1冊出版するようにしています。ここには、出版した拙著の一部の表紙を掲げました。

最近の著書・論文は、以下の通りです。

  • 著書(単著)『医療保険「一部負担」の根拠を追う…厚生労働白書での何が語られたのか』自治体研究社、2019年6月.
  • 論文(単著)「『全世代型社会保障への転換』の目指す方向と課題」『立教大学コミュニティ福祉学部紀要』第22号、2020年3月.

*Portland State University ,2016年4月28日、講演の様子。

また、2016年1年間の研究休暇を頂き、休暇直後の4月28日、Portland州立大学日本研究センター(アメリカ合衆国オレゴン州)の日本の天皇制研究の権威ケネス・ルオフ教授より招聘を受け、“Protecting Social Welfare in Japan: Keeping Article 25 Alive”との講演を、学生・一般の方を含めて約100名を前に英語で2時間講演を行いました。

研究指導

立教に移ってから、院生は外国人が多くなりました。現在も、韓国人、中国人の方が私の研究室に所属しています。日ごろから、日本人の学生でも読破するのが難しいような専門書をローテンションで発表していただくようにしています。また、研究指導は週1で開催していますが、海外の方が多いこともあり、初年度は「日本語の読み書き」にも注意して研究指導を行っています。加えて、月1回、全国の若手の研究者を中心に社会保障政策研究会を池袋キャンパスで開催し、院生の方も毎回出席し積極的に議論を交わしています。

実践的な取り組み

*New Zealand Prostitutions’ Collective (ニュージーランドセックス・ワーカー協会)2016年10月20日でのインタビューの様子。

立教に赴任して10年が過ぎましたが、フィールドもようやく関東に移ってきました。幅広く社会保障制度研究をしていますが、近年犯罪受刑者の出所後の社会復帰の福祉的支援モデル事業に関わり、今年から埼玉県再犯防止推進モデル事業推進会議の委員に就任しました。
また、20年以上ニュージーランドの社会保障制度研究も行っていますが、隔年でニュージーランドを訪問しインタビュー調査を行っています。社会保障制度は、国によって随分違いますが、社会保障の将来像を考える場合には海外の社会保障制度を理解していることがとても大事だと思います。皆さんも、海外の制度に興味を持つことが大事でしょう。

受験生へのメッセージ

研究は、発想力がとても大事ですし、それに加えて、努力も求められます。また、早い段階で自分の研究したいテーマを見つけ、その研究を継続することが大切です。