大学教員インタビュー

杉山 明伸准教授

杉山 明伸准教授
ソーシャルワーク

研究内容

私は学卒後、24年間、2つの病院でソーシャルワーカー(MSW)として勤務してきました。最初は精神科・結核・小児科・産科の病棟も備えた総合病院、2ヶ所目は救急・リハビリ・緩和ケア・在宅ケア・人工透析に力点を置いた地域医療支援病院でした。そして、地元の医療社会事業協会の代表を務めて25年を迎えました。私の関心は、精神科領域も含めたMSWの養成、保健医療領域でのMSWの実践と社会保障制度へのMSWのスタンスにあります。
私が40年ほど前に業界デビューした頃とは比べようもないほど、現在のMSWは医療システムの中で一定の配置が進むようになりました。しかし、せっかくMSWとして就職しても、短期間のうちに離職・転職してしまう人が少なからずいることが深刻な課題として指摘されています。また、社会保障制度の改定や医療スタッフ間での力関係が業務に影を落とし、MSWのストレスとなっていることも多方面から耳にするようになりました。

私は、ここ5年ほど、他大学の2人のMSW出身教員とともに、業務中断者を対象として中断までの経緯や背景を明らかにして、業務中断を防止する方策の検討に役立つことを目的に、科研費を得て2県のMSW協会でのアンケート調査と実際に離職された人への面接調査を行い、量的・質的分析の後、私たちなりに対処法をまとめました。その成果は、3人で手分けして学会・機関誌・学部紀要などで報告してきました。また、地域や医療法人の研修会などでも、チャンスをいただけるときは積極的に講師を引き受けました。下記は学会等で私が筆頭表記で発表したものです。

2017年6月:「医療ソーシャルワーカーの業務継続中断の要因分析 KJ法による抽出」第37回日本医療社会事業学会
2017年8月:「医療ソーシャルワーカーの業務継続意向の関連要因に関する研究」『医療と福祉』No.102
2018年3月:「医療ソーシャルワーカーのSense of Coherenceとその関連要因の検討」『立教大学コミュニティ福祉学部紀要』No.20

そして、2020年春、これらの調査研究をもとに、『医療ソーシャルワーカーのストレスマネジメント やりがいをもって仕事をするために』を中央法規から出版しました。あくまでも現任のMSWの実践に役立ち、将来MSWを目指す学生が具体的に現場を理解することを重視して、執筆時にはなるべく理解しやすい平易な表現を心がけました。

研究指導

大学院科目「ソーシャルワーク研究1」では『多職種連携』について院生とディスカッションしています。『連携』はMSWとして本質的に極めて重要なテーマですが、政策的に医療および福祉領域に導入されてきた経緯があり、ソーシャルワークとしての目的と政策的な狙いとには決定的な乖離があります。このため現任者は大いにジレンマを感じることになります。院生には臨床に従事している人もおられますので、私としても興味深く、現実認識を共有しています。
これまで博士前期課程で主担当として関わってきた(いる)院生は、現場経験を経てからの人もいれば学部から直接進学した人もいます。それぞれの研究テーマは、急性期病院のMSWが退院援助する際の判断根拠、大学生のイマジナリーコンパニオン体験、精神障害者がセルフヘルプグループに参加することの意義、メアリー・リッチモンドの幼少期の体験がケースワーク理論化に及ぼした影響、というものです。実態調査の量的分析や文献調査による歴史研究ですが、いずれの院生も大学院での学びを臨床の実践に反映しようと心がけています。現在の院生は、過日、コロンビア大学のRare Book & Manuscript Libraryに出向き、リッチモンドに関する資料を収集してきました。

実践的な取り組み

現任者時の2ヶ所目の病院は現在も非常勤MSWとして出入りすることを容認してくれています。患者・家族にとって必要なものは何か、この国の社会保障制度が患者・家族と病院スタッフにどのような影響を与えているか、この状況の中でMSWはどうあるべきか、現場で考えることのできる幸いを実感しています。また、この病院の現任MSWとは、毎年、研究テーマを定めて、県MSW協会の学会で発表し続けています。下記はここ5年のテーマです。テーマ内容や取り上げるデータによって、事例検討、t検定・x2検定、テキストマイニングなどを用いて分析しました。

2019年度 透析患者の終末期における意思決定支援
2018年度 外来部門に勤務するソーシャルワーカーの存在意義
2017年度 ソーシャルワーカーが行う退院支援
2016年度 救急外来におけるソーシャルワーク援助
2015年度 在宅療養支援診療所におけるソーシャルワーク援助

受験生へのメッセージ

私は臨床現場にこだわって、実践・教育・研究に取り組んできました。私の院生への正直な期待は「まずは現場に出向き(戻り)、研究してきた根拠に基づき、ソーシャルワークを展開してほしい」です。その実践に取り組む姿勢が他のMSWにも影響を与え、延いては患者・家族が納得して自らが進む道を選択できるような支援を、どこの保健医療領域でも実現することを願っています。