鈴木弥生教授が「国際開発学会奨励賞」を受賞

コミュニティ政策学科の鈴木弥生教授が「国際開発学会奨励賞」を受賞しました!

 

「国際開発学会奨励賞」は、さまざまな学問分野で発展してきた開発問題に関する知識や経験体系を集約した学術的研究組織である「国際開発学会」が設けている賞です。

詳細は大学HPにてご覧ください。

 

拙著『バングラデシュ農村にみる外国援助と社会開発』日本評論社、2016年
国際開発学会奨励賞によせて(コミュニティ福祉学部 コミュニティ政策学科 鈴木弥生)

バングラデシュを初めて訪れたのは1997年の雨季です。それ以降、貧困という問題に直面しながらも農村や首都ダカのスラムで互いに助け合いたくましく生きる人々に惹きつけられ、2012年3月に至るまで12回の現地調査および文献・資料収集を行ってきました。

バングラデシュが独立国家となったのは1971年です。調査対象地域のクミッラ県では、それ以前の1960年代から、アメリカ合衆国の青写真(上から下への援助計画)に基づいて大規模開発の実験が行われてきました。これ以降、巨額の援助資金によって化学肥料や農薬が大量に投入され、近代農法が普及・拡大します。それに伴い道路や橋梁建設などのインフラも整備され、市場経済の発達と世界市場への統合によって伝統的な農村での生活は徐々に変化していきます。

独立以降は、日本やアメリカを始めとする援助や世界銀行の融資によって大規模開発が広範囲において行われてきました。調査対象地域の農村では、大規模な道路拡張計画によって屋敷地を剥奪された最貧困層がスラムを形成して生活を営んできました。また、日米主導によって促進された近代農法による水稲栽培は乾季に集中していますが、化学肥料や農薬のほか、灌漑設備に投資できるのは一定以上の農地所有者に限られています。このような援助や開発のあり方は、農村内のさまざまな格差を拡大する側面があります。そのため、貧困や社会問題が解決せず、貧困層のなかでも、とりわけ貧困女性が周辺におかれている実態が現地での戸別訪問調査等から明らかになりました。

そこで、現地NGO(Non-Governmental Organization: 非政府組織)であるBRAC(Bangladesh Resources Across Communities) やASA(Association of Social Advancement)、そして、グラミン銀行といった市民社会の活動への貧困女性の参加実態を明らかにするよう努めてきました。これら市民社会の職員は、農村内に入り、諸外国主導による援助や開発では周辺におかれてきた貧困女性との対話を重視しています。それまで、農村内の自宅周辺で過ごすことが一般的であった女性たちは、市民社会の職員との相互作用や農村内で培ってきた相互扶助関係を通して、草の根レベルで小グループ(ショミティ)を形成しています。そこでは、文字の読み書き、子どもの教育や識字の重要性、女児の早婚やダウリー(結婚持参金)といった社会問題、家禽研修やマイクロクレジット(少額融資)の活用を通して、家庭内の貧困問題や農村内の社会問題を解決する力を身につけています。こうした社会発展過程への参加は、自身のエンパワメント形成、家庭内における女性の意思決定機会の拡大のみならず、子どもの就学機会確保をはじめとする家族構成員のウエルビーイング向上、早婚やダウリーの慣習を撲滅しようといった社会問題の解決にも影響しています。

こうして本書では、社会開発を推進する市民社会が貧困層の内発的発展を引き出し、貧困や社会問題を克服し得ることを示し、発展/開発と貧困削減における市民社会の役割を検証しています。

本書の刊行は、日本学術振興会2015年度科学研究費助成(研究成果公開促進費)によるもので、現地調査は、1999年来継続的に頂いた文部科学省科学研究費助成によって実施することができました。助成機関にお礼を申し上げるとともに、ご支援いただいた教職員の皆様に感謝の意を表したく存じます。今回の受賞を励みに、今後とも研究・教育に精進してまいります。

バングラデシュ農村の子どもたち